2011年5月6日金曜日

グリンカ 悲愴トリオ

新緑がまぶしい。

初夏が近づくと、木管楽器の音が聞きたくなる。

フルートやオーボエのキラキラした音色も初夏に合うけれど、本物の夏が来る前に、緑と風薫るなかで、クラリネットとファゴットの切なく物悲しい音色が聞きたかったらこれ。

これは最高の名人芸だ。カール・ライスターのクラリネットと、ミラン・トルコヴィッチのファゴット、フェレンク・ボーグナーのピアノ。
ライスターは長年ベルリンフィルの首席クラリネット奏者で、何度も来日したことのある人なので、その実力は有名だが、実は秀逸なのはファゴットのトルコヴィッチ。
こんなにうまいファゴット奏者の音は聞いたことがない。

ファゴット吹きと言えば、長い木の管を不器用にとつとつと操作して、地味な目立たない、でも味わいのある音を出しているイメージ。
トルコヴィッチは違います。全然不器用さを感じさせない。
ファゴットなのに、艶やかな華のある音で、音程もいつも正確、十分主役が張れる存在感。

聴いていて本当に気持ちのいいファゴットです。
もちろんライスターのクラリネットもうまいし、ピアノのボーグナーも息がぴったり。

曲目は、グリンカの悲愴トリオをはじめ、ベートーヴェンやプーランク、エルガーなども収録。

ケーキに例えるならばこのトリオは、ザッハトルテ?
スポンジがピアノで全体を形作り、上質なチョコレートの風味がクラリネットで、上にかかったパリパリコーティングのチョコがファゴット。

新緑の中でおいしいザッハトルテをいただいた感じ。




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